「歯周病は歯ぐきの病気だから、歯が悪くならなければ問題ない」
そう思っている方もいらっしゃるかもしれません。
しかし近年、歯周病はお口の中だけの問題ではなく、全身の健康との関係についても研究が進められています。
その中でも注目されているのが、歯周病と認知機能低下・認知症との関係です。
「歯周病になると認知症になる」という単純な話ではありません。
一方で、歯周病のある人では認知機能低下や認知症との関連がみられるという研究が報告されており、お口の健康を長く守ることは、将来の健康を考えるうえでも大切なテーマになっています。
今回は、歯周病と認知症の関係について、現在わかっていることと、私たちが日頃からできる予防について、くろおかファミリー歯科の考え方を交えながら解説します。
目次
そもそも歯周病とは?
歯周病とは、歯と歯ぐきの境目に付着したプラーク(歯垢)に含まれる細菌などによって、歯ぐきや歯を支える組織に炎症が起こる病気です。
初期の段階では歯ぐきが赤くなったり、歯磨きのときに出血したりする「歯肉炎」が起こります。
その状態が進行すると、歯を支えている歯槽骨などにも影響が及ぶ「歯周炎」へと進んでいきます。
歯周病が進行すると、歯がグラグラしたり、歯を支える力が弱くなったりして、最終的には歯を失うことにつながる場合があります。
そして歯周病の大きな特徴の一つが、初期には痛みなどの自覚症状が出にくいことです。
「痛くないから大丈夫」
ではなく、症状がなくても定期的にお口の状態を確認することが大切です。
歯周病と認知症にはどんな関係があるの?
近年、歯周病と認知機能低下や認知症との関連について、多くの研究が行われています。
2024年に発表されたシステマティックレビュー・メタ解析では、歯周病のある人では、認知機能障害や認知症との関連が認められました。
また、2025年に発表された別のメタ解析でも、歯周炎と認知症との関連が報告されています。特に重度の歯周炎との関連が強くみられました。
ただし、ここで大切なのは、
「歯周病がある=認知症になる」
という意味ではないことです。
現在の研究の多くは観察研究であり、歯周病と認知症の間に関連があることは示されていても、「歯周病が認知症を直接引き起こす」という因果関係まで確定したわけではありません。
年齢、生活習慣、全身疾患、社会的・経済的要因など、さまざまな要素が関係する可能性もあります。
そのため、現時点では「歯周病と認知症には関連がある可能性があり、今後さらに研究が必要」と考えるのが適切です。
なぜ歯周病と認知症が関係すると考えられているの?
では、なぜお口の病気である歯周病と、脳の病気である認知症との関係が研究されているのでしょうか。
現在考えられている理由の一つが、慢性的な炎症です。
歯周病は、歯ぐきで慢性的な炎症が起こっている状態です。
また、歯周病の原因となる細菌や、その細菌によって生じる炎症反応などが、全身の健康に影響を与える可能性についても研究されています。
さらに、歯周病が進行して歯を失うと、
「噛みにくくなる」
↓
「食べられるものが変わる」
↓
「食生活や栄養状態に影響する」
といった変化につながる可能性もあります。
このように、歯周病と認知機能の関係には、炎症、細菌、歯の喪失、栄養状態、噛む機能など、さまざまな要素が関係している可能性があります。
ただし、これらは現在研究されているメカニズムであり、歯周病を治療すれば認知症を防げると証明されたわけではありません。
だからこそ、今後さらに研究が必要とされています。
「歯を残すこと」は全身の健康を考えるうえでも大切
認知症との関係を考えるとき、私たちが特に大切だと考えているのが、できるだけ自分の歯を長く残すことです。
歯を失うと、食べ物を噛む機能が低下することがあります。
特に歯の本数が減ったり、奥歯を失ったりすると、硬いものや繊維質の多い食品などを食べにくくなる場合があります。
その結果、食生活が変化する可能性があります。
もちろん、「歯が少ないから必ず認知症になる」ということではありません。
しかし、歯を残し、しっかり噛める状態を維持することは、食事を楽しみ、栄養をとり、生活の質を保つという意味でも大切です。
日本歯科医師会も、歯周病と全身の健康との関連について紹介しており、歯を失わないための予防の重要性を発信しています。
歯周病を予防するために大切なこと
では、将来の歯を守るためには何をすればよいのでしょうか。
特別なことを一度するだけではありません。
大切なのは、毎日の積み重ねです。
① 毎日の歯磨き
歯周病予防の基本は、歯周病の原因となるプラークをできるだけ残さないことです。
特に注意したいのが、
・歯と歯ぐきの境目
・歯と歯の間
・奥歯の周囲
・歯並びが複雑な場所
・被せ物や詰め物の周囲
などです。
「毎日歯磨きをしている」だけではなく、「きちんと磨けているか」を確認することが重要です。
② 歯間清掃を取り入れる
歯ブラシだけでは、歯と歯の間まで十分に清掃することが難しい場合があります。
そのため、必要に応じてデンタルフロスや歯間ブラシなどを取り入れます。
ただし、歯間ブラシはサイズが合っていないと歯ぐきを傷つけることもあります。
自分のお口に合った清掃用具がわからない場合は、歯科医院で相談してみましょう。
③ 定期的に歯科医院でチェックする
歯周病は、自覚症状だけでは判断できません。
歯科医院では、
・歯ぐきからの出血
・歯周ポケット
・歯石の付着
・プラークの状態
・歯の動揺
・歯を支えている骨の状態
などを確認します。
厚生労働省が行う歯周病検診でも、歯ぐきの出血、歯周ポケット、歯石の付着状況などを確認することが検査項目として挙げられています。
「痛くなったら歯医者に行く」のではなく、「悪くなっていないか確認するために歯医者へ行く」。
この考え方が、予防歯科では非常に重要です。
歯周病予防は「何歳から」始める?
「歯周病は大人の病気だから、子どもには関係ない」
と思う方もいるかもしれません。
しかし、予防という観点では、できるだけ早い時期からお口を大切にする習慣を身につけることが重要です。
子どもの頃から、
・毎日歯を磨く
・仕上げ磨きをしてもらう
・定期的に歯科医院でチェックする
・自分の歯を大切にする
・正しい歯磨き方法を身につける
といった習慣を作っておくことは、大人になってからのお口の健康にもつながります。
くろおかファミリー歯科では、子どもの仕上げ磨きについて、小学校卒業まではできる限り続けていただくことをおすすめしています。
そして中学生・高校生になったら、少しずつ自分自身でお口を管理できるようになることを目指します。
当院では、中学生・高校生のお子さんにも来院のたびに染め出しを行い、磨き残しを確認しながらTBI(歯磨き指導)を行っています。
「親が管理する」から「自分で管理できる」へ。
この移行をサポートすることも、私たちが考える予防歯科の大切な役割です。
お口の健康は「健康寿命」にも関係する
健康に長く生活するためには、単に病気がないだけではなく、
「自分で食べられる」
「自分の歯で噛める」
「人と会話できる」
「食事を楽しめる」
といったお口の機能も重要です。
歯周病を予防することは、歯を残すことだけが目的ではありません。
自分の歯でしっかり噛み、食事を楽しみ、できるだけ長く自分らしい生活を送るための土台づくりでもあります。
厚生労働省も、歯周病やむし歯、歯の喪失などの口腔疾患を、高齢者の健康寿命に関わる重要な健康課題の一つとして位置づけています。
くろおかファミリー歯科が考える「将来の健康のための予防」
私たちが大切にしているのは、
「悪くなった歯を治す」
だけではありません。
できるだけ、
「そもそも悪くならない」
ことを目指しています。
歯周病も、進行してから治療するより、できるだけ早い段階でリスクを把握し、予防していくことが大切です。
そのためには、
毎日のセルフケア
歯科医院でのプロフェッショナルケア
定期的な検診
生活習慣の見直し
を組み合わせていく必要があります。
当院では、歯科医師・歯科衛生士だけでなく、管理栄養士も含めて、お口の健康をサポートしています。
歯周病を予防するために必要なのは、単に「もっと歯を磨きましょう」と伝えることだけではありません。
その方の生活や習慣を一緒に考え、無理なく続けられる予防方法を見つけることが大切だと考えています。
「認知症を防ぐために歯周病を予防する」ではなく、「健康な未来のためにお口を守る」
歯周病と認知症について研究が進んでいると聞くと、
「歯周病を治せば認知症を防げるの?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、現時点ではそこまで単純に結論づけることはできません。
歯周病と認知症には関連が報告されていますが、因果関係についてはまだ明らかになっていない部分が多くあります。
だからこそ私たちは、
「認知症予防のためだけに歯周病を予防する」
のではなく、
「これから先も、自分の歯で食事を楽しみ、自分らしく生活するために、お口を大切にする」
という考え方が大切だと思っています。
その結果として、将来の全身の健康にも良い影響がある可能性があります。
よくある質問
Q. 歯周病になると認知症になるのでしょうか?
いいえ、現在の研究から「歯周病になると認知症になる」と断定することはできません。
歯周病と認知機能低下・認知症との関連を示す研究はありますが、因果関係についてはまだ研究が必要です。
Q. 歯周病を治療すれば認知症を予防できますか?
歯周病治療によって認知症を予防できると現時点で断定することはできません。
ただし、歯周病を適切に管理することは、歯を残し、噛む機能や口腔環境を維持するために重要です。
Q. 歯周病は痛くなくても治療が必要ですか?
はい。
歯周病は初期には痛みが少ないことがあるため、症状だけで判断することはできません。
歯ぐきからの出血や腫れなどがなくても、定期的に歯科医院で状態を確認することをおすすめします。
まとめ
歯周病と認知症の関係については、現在も多くの研究が行われています。
近年の研究では、歯周病と認知機能低下や認知症との関連が報告されています。
ただし、
「歯周病が認知症を引き起こす」
とまで証明されたわけではありません。
だからこそ、必要以上に不安になるのではなく、
「将来も自分の歯で食事を楽しめるように、今からお口を大切にする」
という考え方が大切です。
歯周病を予防するためには、
・毎日の丁寧なセルフケア
・歯間清掃
・歯科医院での専門的なケア
・定期的な歯科検診
・健康的な生活習慣
を継続していきましょう。
くろおかファミリー歯科では、悪くなってから治療するだけではなく、「できるだけ治療しなくていい未来」を一緒につくることを大切にしています。
今のお口の健康を守ることは、これからの人生を守ることにもつながります。
「最近、歯ぐきから血が出る」
「歯磨きがきちんとできているか分からない」
「しばらく歯科検診を受けていない」
そんな方は、一度お口の状態を確認してみませんか?
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監修者情報

経歴
- 2003年 私立淳心学院高等学校卒業
- 2011年 北海道大学歯学部卒業 北海道大学歯学部第一補綴科にて研修を行う
- 2012年 大阪府下の義歯に特化した自費診療専門の医院で勤務
- 2013年 大阪府下 医療法人 副院長就任
- 2014年 同医療法人 分院長就任
- 2024年 くろおかファミリー歯科 開業



