目次
【患者さん情報】
7歳 女性

【相談のきっかけ】
下の前歯がすごく内側から生えてきた、違う歯医者で様子を見ましょうと言われたが本当に様子を見ていていいのか心配で来院されました




【問診票での「お子さんに当てはまるもの」】
・お口がポカンとあいていることが多い
・歯並びが悪い
・食べるのが遅い
・姿勢が悪い
【検査で判明した問題点】
〈形態〉
歯並び
・上の奥歯が内側へ倒れ込んでいる
・下の奥歯が内側へ倒れ込んでいる
・上の2番めの歯の生えるスペースが足りなさそう
・下の前歯がガタガタで生えるスペースが足りない
顔面の発育
・上顎の成長が小さい(上顔面劣成長)
・下顎が下向きに成長している(下顔面下方成長)
気道
・低舌位
・舌根沈下による気道閉塞
〈呼吸と姿勢〉
呼吸
・口呼吸
姿勢(位置)
・肩が左下がりになっている
・首が右に傾いている
〈機能〉
嚥下(飲み込み)
・口をすぼめる ・口輪筋(唇の筋肉)の緊張
・おとがいの緊張 ・勢いをつけて飲み込む
【本日お話しした内容】
前の歯医者さんで「様子を見ましょう」と言われたとのことでしたが、当院では今すぐにでも手をつけていきたい症例となります。
右下の2番めの永久歯が生えるスペースが足りず内側から頭を出してしまっています。常にお口がポカンとあいており口呼吸になっています。口を意図的に閉じて鼻呼吸を促すと鼻で呼吸することはできるのですが昔からの習慣で口呼吸になってしまっているようです。
診断の結果、下顎の骨が少し下方に成長しているのですがこの原因の一つに口呼吸が挙げられます。口呼吸になると本来上顎の天井に常についていないといけない舌が下に落ち込んでしまうことにより空気の通り道が生まれます。そのため口呼吸するためには舌は常に下方に落ち込んでいることになります。舌が正常に上顎についていることで下顎も上方に引っ張られるので下顎の下方への成長はある程度抑制されるのですが、口呼吸になると抑制されることなく下への成長を促してしまいます。そのため口呼吸の人は面長な見た目の人が多くなります。
また水飲みテストで嚥下時に舌がうまく使えておらず、お口周りの筋肉に緊張や余分な動きが認められました。正常な嚥下では見た目にはほとんど飲みこんでいるかどうかが判別できないのですが、今回は勢いをつけて口周りの筋肉を精いっぱいに動かして嚥下を行っています。1日の嚥下の回数は平均で約600回と言われており、1日に600回頬や唇の余分な力が歯を内側に倒し込むような力として働いてしまいます。そのため歯が生えるスペースが足りなくなってしまい歯が生えるスペースを求めて大きく内側から生えてきたに至ったと考えられます。(下の前歯が内側から生えてくること自体は正常なことです)
これらの理由からこのままでは様子を見て行っても口呼吸や飲み込みの癖が良くなることはなく、むしろ悪化していくことが予想されます。
様子を見ましょうと言われた際には一度べつの歯医者さんに行って様子を見てもらうことをオススメします。
今からしっかりとトレーニングを行いまずは鼻呼吸の習慣化に向けて頑張っていきましょう。トレーニングと並行してマイオブレースを使用して歯に余計な力がかからないようにして歯並びの改善も行なっていきます。
口呼吸や飲み込みの癖が残っていては一時的に歯並びが改善したとしてもすぐに後戻りしてしまいます。最大の目標は鼻呼吸や正常な飲み込みが無意識のうちにできるようになることです。そのためには月に一回の来院よりもお家での毎日のトレーニングがとても重要になってきます。1日に5~10分でいいので毎日の継続をお願いします。
監修者情報

経歴
- 2003年 私立淳心学院高等学校卒業
- 2011年 北海道大学歯学部卒業 北海道大学歯学部第一補綴科にて研修を行う
- 2012年 大阪府下の義歯に特化した自費診療専門の医院で勤務
- 2013年 大阪府下 医療法人 副院長就任
- 2014年 同医療法人 分院長就任
- 2024年 くろおかファミリー歯科 開業